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1.即時型食物アレルギー

食物アレルギーといえば、通常このタイプを指します。IgEという抗体が関わるもので、原因となる食べ物を食べてから2時間以内、通常は1時間以内に症状が出ます。小児に多くみられ、乳児では約10%に認められます。

ただし、多くは成長とともに食べても症状が出なくなり(耐性獲得)、3歳では約5%、学童期には約2%に減少します。このように自然に良くなることが多いのですが、厳格な除去食を続けると治りにくくなることがあります。症状が出ない範囲で食べ続けることが耐性獲得には大切であり、また原因となる食べ物を早めに摂取し始めることで発症を予防できることも分かってきました。

診断と検査

診断は、症状が出る前に食べたものを詳しく聞き取り、血液検査で陽性かどうかを確認することで行います。ただし、血液検査で陽性でも実際には食べても大丈夫なお子さんも多くいます。そのため、食物アレルギーがあるかどうかを確かめたり、食べて治すために安全な摂取量を確認する目的で「食物経口負荷試験」を行います。

2.食物蛋白誘発胃腸症

1とは異なり、IgEが関わらないタイプで、比較的新しく知られた食物アレルギーです。

最初に知られたのはミルクアレルギーによるもので、「新生児・乳児消化管アレルギー」と呼ばれていました。生まれて1か月以内にミルクが原因で、嘔吐や下痢、血便などの症状が出ます。適切に対処しないと命に関わる重症のケースもありますが、体重がなかなか増えないだけの子や、血便だけの軽症のケースもあります。

この10年で急速に増えてきたのは、離乳食を始めてしばらく経ってから発症するタイプです。食べてから2時間前後で突然数回の嘔吐をしたりぐったりすることがあり、下痢を伴うこともあります。
私たちは卵黄、小麦、果物、魚介類などが原因の患者さんを経験していますが、世界中でも注目されており、最近では成人でも報告されるようになっています。
主要な原因食物は国によって異なりますが、日本では卵黄が多くを占めます。なお、卵の即時型食物アレルギーは卵白が原因となることが多いのに対し、食物蛋白誘発胃腸症では卵黄が原因となることが多いです。

診断と検査

診断は、IgE抗体が陰性であることが多く血液検査では分からないため、食物経口負荷試験で診断します。

生活管理指導表について

保育園、幼稚園や学校で給食の除去食を希望する場合、「生活管理指導表(アレルギー疾患用)」の提出が義務付けられています。指導表には、食物アレルギーの型、アナフィラキシーの有無、原因食品、診断の根拠、エピペン®(激しいアレルギー症状が出たときに使う自己注射薬)の処方の有無などを記載します。

多くの保護者にとって、入園・入学までに他の子どもたちと同じ給食を食べさせてあげたいという思いがあるでしょう。食物アレルギーは、原因食品を少しずつ食べることで治っていくことが分かっています。そのため、園や学校では除去食であっても、家庭では安全な量を積極的に食べさせることが大切です。

少しでも早く取り組むことが重要ですので、食物アレルギーが心配な方は早めにご相談ください。「生活管理指導表(アレルギー疾患用)」は園、学校で配布しています。標準書式であれば原則としてご持参いただいた当日に記入してお渡しできます。

アナフィラキシー

アナフィラキシーとは、アレルゲンなどの侵入により、皮膚・呼吸器・消化器など複数の臓器に全身性のアレルギー症状が現れ、生命に危険を及ぼす可能性のある過敏反応のことを言います。さらに血圧低下や意識障害を伴う場合は「アナフィラキシーショック」と呼ばれます。

2012年、調布市で小学校5年生の女児が給食の誤食によるアナフィラキシーで亡くなり、「食物アレルギーは恐ろしい」という認識が広まりました。
しかし、我が国でアナフィラキシーで亡くなる方は年間50~70人程度で、その多くは薬剤やハチ毒によるもので、食物アレルギーが原因で亡くなるのは数名以下と、決して多くはありません。

大変痛ましい事故でしたが、この出来事をきっかけに、食物アレルギーやアナフィラキシーに対する社会的な対応が急速に整備されました。アナフィラキシー対応の第一選択薬はアドレナリンの筋肉注射で、その自己注射であるエピペン®を適切に使用することで、大きな事故を防げる可能性があります。

エピペン®への対応について

文部科学省では、エピペン®使用を含めた学校でのアナフィラキシー対応研修を進め、厚生労働省や自治体の働きかけにより、保育園や幼稚園も同様の対応が可能となりました。現在では、学校や園でエピペン®を含めたアナフィラキシー対応が行える体制が整っています。それまでは、エピペン®を携帯している重症の食物アレルギー児が地域によって入園を断られるケースもありましたが、最近はほとんど聞かれません。

私たちの外来でも、園や学校と密に連絡を取りながら、エピペン®の使用方法についてしっかり指導しています。